小児のインフルエンザ
注意:発熱後24時間以内は検査陽性になりにくいので、夜間の発熱なら翌日に受診。
I. 治療;ノイラミニダーゼ阻害剤。可急的速やかに,できれば発症後48時間以内に開始。異常行動に注意。タミフルは10代には不可。症状と食欲が回復するまで長めに自宅安静。
II. 感染予防:予防接種(*吸入ステロイドは免疫機能を低下させるので感染時は中止)
2) 家族から隔離:妊婦、乳幼児、高齢者は重症化する危険があり、患者とは別棟か別室に隔離する。患児の兄弟は実家に預ける。複数人で看護すると家族内感染の危険が高まるため、看護する人を一人決め、他の人は看護する人を手伝うに留めるのが望ましい。
3) 家族へのタミフル(経口)、リレンザ(吸入)の予防的投与:患者とは隔離の上で、半分量(一日一回)を5〜7日間使用すると約80数%の予防効果。約1万円≦
4) 乳幼児・妊産婦・高齢者がいる場合:高齢者・幼児だけでなく家族にも予防接種
5) 成人でも、インフルエンザにかかりやすいか、喘息・糖尿病その他の基礎疾患がある場合:あらかじめ予防接種を。流行期に無理をしない。流行時は人込みに出ない!
6) 登園・登校:2、3日以上解熱し、元気が出たら、医師の許可書を取りにきてください。一日三回熱を記録し本人が解熱し状態が良好なら、御家族のみの来院(経過報告)でよい
I.1)ノイラミニダーゼ阻害剤を使用すると、通常約2日で解熱し始めます。
インフルエンザにかかると、小児や10代の場合、ノイラミニダーゼ阻害剤(タミフル・リレンザ・イナビル・ラピアクタ等)使用時に10%、不使用でも10%、幻覚飛び降りなどの死の危険を伴う異常行動が出現します。インフルエンザにかかったら、お子さんから決して目を離さず、戸締りをしっかり、危険物を片付け、最低48時間以内は一人にしないようにしましょう。なお、タミフル使用以来、小児でのインフルエンザの重症化(肺炎、気管支炎、痙攣)や入院は激減しており、無治療・無投薬の場合、重症化・肺炎・呼吸不全・脳炎・脳症・心筋症などの合併により死亡する事があります。また、以前、熱譫妄による異常行動と思われていた症例の一部が、MRIにより脳症であったことも明らかになっており、無投薬は危険です。なお、タミフルが禁じられているのは10歳以上であり、9歳以下では投薬の制限はありません。9歳以下だとイナビルやリレンザの吸入は困難で、うまく吸入できずに発熱が持続して重症化し、入院になる症例が多発しておりますので、9歳以下はタミフルでないとかえって危険ですのでご注意ください。なお、インフルA型は約1.5日で、B型は約2日で解熱し、Bは若干時間がかかります。
II.1)インフルエンザの予防接種で感染は防げませんが、抗体がつけば、小児と老人、基礎疾患のある方が重症化、死亡する可能性は低くできます。
実際、ワクチン接種してある子供たちは、熱が出ても低めで合併症も少なく、食欲も比較的良好で解熱・回復も早いのに対し、接種してない子供たちは40℃を超えたり、食欲が失せてぐったりしたり、治療しても解熱に時間がかかる事が圧倒的に多いです。
小児は低年齢程抗体ができにくいですが、過去かかった型については予防接種で抗体が獲得されやすいです。また、小児では低年齢ほど重症化や脳症、死亡の頻度が高いですので、抗体がつきにくいとはいえ、接種しないわけにはいきません。特に、3歳未満、特に2歳未満で託児所や保育園に入園すると、インフル以外にも感染症の重症化と遷延化が指摘されています。本当は3歳以上から集団生活を開始するのが、安定した母子関係、家族関係の構築と感染対策上は理想的ですが、それができない場合には、インフルエンザのみならず、各種の任意接種も含めたワクチンを入園前には終わらせておく必要があります。なお、インフルエンザのワクチンは、小児;10月中下旬と11月中下旬の2回接種。成人;11月下旬に1回接種です。小児科医は自分自身や家族全員に毎年接種していますが、それは現場で未接種者が重症になるのを毎年見ているからです。呼吸器内科の医師も同様です。
感染対策上、外出後の手洗いうがい。外来での感染予防のため、流行期には一部の病院に詰めかけず、なるべく込み合っていない病院に分散して受診する。流行期は大手デパートや子供サークルなどの人ごみには出ない、バス・電車などの公共の乗り物はなるべく利用しない。初詣や法事には子供・妊産婦・高齢者・基礎疾患のある方は行かず、5、6月、10月頃の感染症が少ない温暖な時期にする。年末年始の福袋やバーゲンには子供・妊産婦・高齢者・基礎疾患者は行かない。バランスの良い食事、十分な睡眠を確保し、過度のストレスや肉体疲労、睡眠不足や不摂生を避ける。部活の大会や各種の体を使う発表会はこの時期にはなるべく開催しないようスケジュールを調整し、行事が重ならないようにする。また、家族の病気や死亡、葬儀や看護、リストラ、学校でのいじめ、受験、転居、死別や離婚、転職、部署替え、災害など、身心の疲労がある場合、よく家族や小児が病気になります。こうした時には生活全般を緩め、決して無理をしないようにしましょう。頑張ってはいけません。過度の我慢も忍耐も駄目です。ストレスマネージメントの努力をしましょう。
なお、喘息などで使用する吸入ステロイドは免疫機能を低下させますので、インフルエンザに感染したら、回復するまではできるだけ中止し、主治医の判断を仰いでください。喘息の発作時のために吸入器を購入しておくと、病院レベルの治療もでき、吸入薬のインタールにはインフルエンザの予防効果もあるので一石二鳥です。
2)ウイルスや細菌は2倍ずつに増殖します。従って、集団生活で少量の病原体に感染しても、増殖には増殖するのに時間を要するので、その間に免疫反応が起きて軽症で終わる可能性があります。ところが、家族内感染では濃厚接触になりやすく、特に食事時にはマスクが使えないため最も感染しやすく、しかも夜も昼も一緒に居るので大量にウイルスを吸いこみます。特に、大人と違い子供たちは咳エチケットなしに病原体を大量にばらまきます。最初に多量の病原体に感染すると、増殖も早く、その結果、多数の細胞や広汎な組織がダメージを受けてより重症になる可能性があります。家族内予防の原則は隔離です。もし実家が遠隔地で祖父母に健康な子を預かってもらえないなら、患児の部屋を決め、そこには絶対に他の子や基礎疾患者、高齢者や妊産婦を入れないでください。また、家族内で感染が起きたなら、健康な親が患児を看病するのではなく、感染した親が感染した子を別室で看病するようにすると、既に感染しているので相互にはうつらず、健康な家族に感染しにくくなります。
3)希望なら医師に御相談ください。ただし、適応外の場合や、妊婦さんは服薬できません。
4)インフルエンザワクチンの乳児への効果は弱く低年齢程抗体が付きにくいため、0歳児や妊産婦、あるいは感染のハイリスクである高齢者や基礎疾患者がいるご家庭では、流行前に年長の兄弟姉妹や両親、同居家族に接種しておくとよいでしょう。
5)全年齢で体調の管理が最も重要。旅行の後や、かぜ気味の時にはかかりやすくなります。
6)治療により解熱しても、小児の場合ウイルスは数日間残っており、すぐ登校登園させると再燃する可能性があります。また他のお子さんへも感染する危険があります。薬は使いきり、症状と体調が十分回復し、食欲が普段通りに戻ってから集団生活に戻しましょう。特に新型では脳炎脳症・呼吸不全の頻度が高く要注意です。
インフルエンザは重病です。学校伝染病の規定では、解熱後2日で登園・登校できるとされていますが、実際には小児では低年齢ほどウイルスは長く残存しており、また、咳が食欲不振、体調不良がまだあるのに急いで登園・登校させると、いつまでも体調が戻らず咳が長引いたり、他の病気に立て続けに感染することがよくありますのでご注意ください。
なお、お子さんが無事に回復して経過も良いなら、当院ではお子さんの1日3回の熱の記録をご家族に持参して頂き、許可書を発行しています。こうすれば、インフルエンザの病み上がりで免疫力が低下しているお子さんが、外来で別疾患にかかる可能性がゼロにできます。ただし、食欲が全くない、熱が持続、咳がひどいなどで判断に迷う時にはお子さんも受診してください。
文責 知多市民病院 小児科 大野